末路

結果こうなった。チラシの裏の読書感想文。

無責任な上司は、部下の涙を知れ

今回読んだ本:フィードバック入門-耳の痛いことを伝えて部下と職場を立て直す技術/中原 淳

 

子供のころ、幼稚園児の従兄弟を連れて近所の公園に行こうとしたら、大人に止められた経験がある。「小学生のお前と2人で行くのは危ない。中学生のお姉ちゃんを連れて行け」と。十分従兄弟の面倒をみれるし、判断もできる。自分は大人だ。なぜ姉がいないと行っては行けないのだ。それほどまでに信頼がないのか。
その時、そのように言ったかは定かではないが、そういう心持ちになった、ショックだったのは今でも覚えている。今でこそ、大人が止めた理由も理解できるし、今の自分でもそう言うと思う。子供ながらに傷ついたのだ。

 

信頼されないと、人は傷つく。

 

立場上、いろんな人の相談を受ける事があります。先日、次の組織長に推薦された人間から相談を受けた。「他にも組織長になるべき人間はいる。自分でいいのか自信が無い。」彼の組織には同じくらいの年代の人間が数名いて、実は推薦されたのは彼が初めてではなかった。しかしながら、推薦者である、現在の組織長が「彼らはダメだ」という判断で推薦してこなかった(推薦したが辞退された)。その中には、組織長と一番長い付き合いのある人間もいるが、推薦はされなかった。

 

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・厳しい仕事を任せて、ほとんどフォローしないでほったらかしたりすれば、部下はメンタルをやられて出社拒否を起こしたり、不満を爆発させて逆ギレしたりするだけです。それを見て「最近の若い者は情けない」などと言う上司は、あまりにも無責任です。
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彼らは本当に厳しい仕事をさせられている。だが、組織としてどうあるべきか、リーダーとして、組織を運営するにあたって、どうしていったら良いかという事を、残念ながら彼らは指導されずに育ってきた。指導するべき責任がある組織長は言う。「そういうものは、現場の人間が試行錯誤で、自分で気付き、築いていかないと身にならない」そのセリフは、厳しい仕事を部下にしてもらいながらも、個人の成長や、組織の発展を想い、十分なフォローを行なっている人間の言葉であり、この組織長がそれを言う資格はない、と私は思う。

 

フォローもなく、厳しい仕事をし、信頼されずにいる部下たちは、傷ついている。深く。


※その他、気になったポイント
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・フィードバックは、次の二つの働きかけを通して、問題を抱えた部下や、能力・成果のあがらない部下の成長を促進することをめざします

1.【情報通知】   たとえ耳の痛いことであっても、部下のパフォーマンス等に対して情報や結果をちゃんと通知すること (現状を把握し、向き合うことの支援)
2.【立て直し】   部下が自己のパフォーマンス等を認識し、自らの業務や行動を振り返り、今後の行動計画をたてる支援を行うこと (振り返りと、アクションプランづくりの支援

 

コーチングに代表されるように、近年の人材育成方法は、相手に「自分の力で気づかせること」を非常に重視しています。しかし、きちんと成長に必要な情報を理解していない部下は、自分で「気づこう」にも限界があります。ビジネスパーソンにもこれと同じことが言えると思います。黙っていても真っ直ぐ飛んでいける、すなわち軌道修正がまったく要らないビジネスパーソンなどいません

 

・その人の行動のクセ、認識の偏りなどにより、人間の行動は、ひずみやバイアスがかかっています。その中で、真っ直ぐの方向に進んでいくには、自分に関するさまざまな情報を受けながら、すなわちフィードバックをしっかりと受容しながら、それを元に、自分を立て直していかなければなりません。

 

・ちなみに、フィードバックの良き伝え手になるためには、自らも良き受け手である必要があります。フィードバックを正しく受容できない人は、他人に対して、フィードバックを正しく伝えることはできないからです。

 

・「若い部下が育たないのは、あなたのせいではありません。過剰に自分自身を責めないでください。それは、 職場環境の変化によって構造として生まれている現象 なのです」
育成が進まないことで、過剰に自分を責めず、まずは、ぜひ、冷静になって事態を見つめましょう。その上で、希望をもって部下を育成しましょう。今、必要なのは、「冷たい頭と熱い心」なのです

 

・部下育成には、ティーチングが必要な局面も、コーチングが必要な局面も存在するのです。それは「ケースバイケース」なのです。  たとえば、業務経験がまったくない新人に対して、「君はどうすればいいと思う?」などとコーチングの手法を用いて問いかけても、本人の中に蓄積されている業務経験がない状態では、問いに答えようがありません。何もないものの内面を「まさぐって」も、何も出てこないのです。それでも、何か言わないとその場が収まりませんから、そうすると部下は、上司が満足しそうな答えを探して答えるようになります
こうして、部下は、自分の頭で考えずに上司の顔色をうかがう思考停止状態に陥り、伸び悩む。一方、上司は本当に教えたり、言わなければならないことを手控えてしまう。

 

・「コンフォートゾーン」でいられる〝ぬるま湯〟の仕事を与えても部下が成長しないのは言うまでもありませんが、「パニックゾーン」に陥るような仕事をさせても、部下はなかなか成長しません。あまりに失敗するリスクが高すぎると、よほど強靭なメンタルを持っている人でない限り、悪いことばかりが頭をよぎり、本来の能力を発揮できなくなるからです。  かつては、人材育成の業界では「精神論」や「根性論」が横行し、「部下を成長させるには、二階に上げてハシゴを外せ」といった言説がもてはやされた時代もありましたが、それがうまくいったのは、何もしていないように見せかけて、実は影で手厚いフォローをしてくれるようなマネジャーがいたからです。それも仕事の時間に余裕があったので、そういうマネジャーが存在できていたわけです。

 

・筆者の研究によれば、職場で人が育つためには、三つの他者からの支援が必要であることがわかりました。大きく分けて「業務支援」「内省支援」「精神支援」の三つです

 

SBIとは、シチュエーション(Situation)、ビヘイビア(Behavior)、インパクト(Impact)の頭文字をとったものです。

・シチュエーション(どのような状況で、どんな状況のときに)

・ビヘイビア(部下のどんな振る舞い・行動が)

インパクト(周囲やその仕事に対して、どんな影響をもたらしたのか。何がダメだったのか)  この三点を具体的に伝えることで、初めて、相手はあなたの言いたいことを理解してくれます。

 

・もちろん、相手を傷つけるような言い方をしないのは、大前提です。フィードバックは、相手の成長を願い、相手の意志をリスペクト(尊敬)した上で行う必要があるのです。

 

・焦点をあてるべきは、改善したい相手の行動です。部下の行動を徹底的に「観察」し、「具体的行動」を収集しましょう。

 

・振り返りを行っていくときのポイントは、部下が自らの姿を客観的に見られるように、 部下自身に自分の過去・現在の状況を「言葉にさせること」 です。今後は上司が「言葉にする」のではありません。むしろ上司は部下に問いかけを行うことで、部下に自分の言葉で語らせることをめざします。
この段階での部下の振り返りのために、マネジャーは具体的には次の三つのポイントについて話してもらうように、導いていきます。それは「 What?(何が起こったのか?)」「 So what?(それは、なぜなのか?)」「 Now what?(これからどうするのか?)」の三つです

 

・腹をくくってください。   相手から逃げないでください。   しっかりと相手に向き合ってください

 

・フィードバックとは、   受け入れて、攻めること。   負けて、勝つこと。  なのです。  フィードバックにおいて 「聞くこと」は、「論理のほころび」を待つこと なのです

 

・管理職のミッションは、あくまで組織と個人を良くすること。私情をはさんで、その権力を振りかざして、相手をギャフンと言わせようなどというのは、明らかにミッションから外れた行為です。もしそんなことを思うような人がいるならば、その人は、初めから、管理職にはしてはいけないんじゃないかと思います

 

・すべてのフィードバックの起点は、本人がどうなりたいかにある。

 

・部下自身に「自分のなりたい姿」を、あらかじめ言わせることで、それに近づくための方法を一緒に考えている